森政弘先生の教え

今日はロボット工学の大家、森政弘先生から学んだことを紹介してみたいと思います。
先日、先生から以下のようなメールをいただきました。

 先日は、大変なご労作 "An INTELLIGENT Life"を御恵送賜り、誠に有難うございました。

 英語ですのでスラスラとは読めませんでしたが、拝読させて頂き、
 英語は得意でない小生にも、外国人に難解な「唯識」の要点が伝わり易い
 非常に巧い意訳がしてあると感心しております。

 添付ファイルとして、ホオズキの写真を添えますが、その写真に見られる
 ような、枯れて筋だけ残って透け透けになった皮というのが、
 今の小生だという感じです。中に赤く顔を見せている実は、育まれて
 社会の枢要として活躍している弟子達、というつもりです。
 枯れた皮は、消え去るだけです。それが宇宙の大生命として生きている
 ということと、生死を超えた思いでございます。

 横山先生は、まだまだ、皮ではありませんから、「唯識仏教」ご布教に
 精進遊ばすことを、祈念申し上げております。

これに対して私は以下のように返信しました。

  ホオズキの写真と意味深いお言葉を添えていただいたメールを拝受しました。
  皮に近づきつつある私ですが、残された人生、生かされ生きているこの「いのち」をできるだけ多  くの人々のために費やす所存です。
   ありがとうございました。

 
森先生は自然を観察することの大切さを次のように語られています。(先生の著作『非まじめをきわめる』より)

  調和のあるところに矛盾はない。(中略)考えてみると、調和といっても、矛盾がないといって  も同じことをちがった表現をしていることだとわかってくる。(中略)これに関して、もう一つ「全 機」という言葉がある。全機の機とはハタラキのこと、つまり、そのものがもって生まれたハタラキ を余すことなく発揮することが全機するということである。自然は美しい。みごとに調和している。 自然は全機している。(中略)自然は矛盾解決の手本になる。われわれ自身が、われわれが作ったも のが、われわれの組織が、すべて自然のようになれば問題がなくなるのである。だから、生涯の課題 として深く深く自然を味わっていただきたい。硬直した組織での分裂現象を見るとき、会社も、経営 者も、社員も、どれもが全機しているなどといえたものではない。

 確かに自然は、もって生まれたハタラキを余すことなく発揮しています。花が咲いているときには蝶が飛んでくるし、蝶が飛んでくるときには花はちゃんと咲いています。
しかし、われわれ人間はそうではない。心が貪・瞋・癡に代表される煩悩に汚されて、まったく非全機の生き方をしています。だから、組織の中の経営者も、社員も、みんな生涯の課題として深く自然を味わってほしい、と森先生は強く訓告されているのです。
 もって生まれたハタラキを余すことなく発揮している自然を、森先生が言われるように生涯にわたって深く味わいながら生きていこうではありませんか。
 私は森先生から多くの貴重な教えをいただきました。深く感謝いたします。