「アルコール類」と「お酒」との違い

  突然変な質問をしますが、「アルコール類」と「お酒」とはどのように違うのでしょうか。
 この問いを深く考えることによって、私たちは、あらゆる現象的存在は二つの言葉でとらえられることがわかります。その二つの言葉とは、
       「形式」と「内容」
です。
先にあげた「アルコール類」とは、分析するとウイスキー、ワイン、ウォッカ、さらにはお酒、等々の、いわばアルコールを含んだ飲物の総称です。
 これに対してウイスキーないしお酒とは、アルコール類と「総称されたもの」の具体的な内容です。いま内容と言いましたが、これに対して「総称されたもの」を形式と言います。
 このように現象としての存在は、形式と内容と言われる二種類を具えていることがわかります。
 ところで、アルコール類から眼を心(こころ)の領域に向けてみましょう。たとえば、「愛」と一言でいえば、それは「形式としての愛」であり、それの愛の中味を分析すれば、「人間間の愛」「男女の愛」「親子の愛」、さらにはキリスト教でいう宗教的な「神から人間への愛」などに分かれますが、これらいろいろの愛が「内容としての愛」です。
 
 なぜ、まずこのように冒頭で形式と内容という、すこしむつかしい概念を持ちだしたかと言いますと、
 「物質文明の弊害を乗り越えるために<こころの時代>の当来を迎えようではないか」と主張する人が多くいますが、そのような人たちに「あなたが言われる<こころ>とは一体何ですか」という質問をすると、すぐに答えることができる人はほとんどいないでしょう。なぜなら「こころ」は色も形もなく、「物」のように捉えることができないからです。
「こころ」とはまさに形式に過ぎないのです。だから「こころ」についての追究は、次に「こころ」の内容の追究に進まなければならないのです。
 
  今日は、この問題を提起するにとどめておきます。