三浦雄一郎さんの挑戦

 今日は、昨日四月三十日の東京新聞の朝刊に掲載された「三浦雄一郎さん 3度目エベレスト挑戦」と題した手記を紹介します。
 三浦さんは2008年5月26日に、当時七十五歳で二度目のエベレスト登頂を果たしたことで有名ですが、今度三度目の登頂を目指して現在エベレストのベースキャンプに待機中とのことです。氏の手記はまさに私たちに「生きるとはなにか」を教えてくれる感動的なものです。手記の一部を紹介してみます。

 過去の遠征で私は標高四千メートル前後で必ず体調を崩しており、特にひどかったのは十年前の七十歳  のとき。この標高で、心拍が計測不能な数値から一気に三十ぐらいまで下がるという心房細動の不整脈  で気を失いかけ、どうにかベリチェにある診療所にたどり着き、そこにいた米国人ドクターに薬をもら  った。しかし効いたのは薬以上に彼の言葉だった。彼は三十五年前の私の記録映画「エベレストを滑っ  た男」を見ており、私が本人であると知ると、「もう七十歳か。高山病、不整脈が出るのは当たり前、  でもあなたなら登れるだろう」と言う。不思議な暗示だ。意識を前向きに持った時に心と身体がついて  くる。

という一文です。「意識を前向きに持った時に心と身体とがついてくる」−−−なんと感動的な示唆に富んだ一文ではないでしょうか。
 まさにドクターの言葉が三浦氏の深層心に潜む情熱と勇気とを喚起したのです。<唯識>的に言うならば、ドクターの言葉が氏の深層の阿頼耶識の中にある素晴らしい種子を目覚めさせ、よし頑張るぞ、という勇気が生じ身体が活動し始めたのです。素晴らしい「言葉」は、本当に強力な力を持つものなのですね。
 この氏の手記から、私たちは「意識を前向きの持つ」ことの大切さを、すなわち、三浦氏の前には「エベレスト登頂」という目的がありましたが、では私たちは「なに」に向かって意識を前向きに持つのか、お互いに「生きるしっかりした目的」を持つことの大切さを学びとることができます。
 手記の最後を紹介して今日のブログを閉じます。
 
「気象状況をみて一か月後、山頂アタックを目指す。八十歳での三度目の挑戦。どこまでが自分の限界かは 未知数であるが、その好奇心が私を動かす。」